こんにちは。
天パさんです。
NTTがとある技術をプレスリリースしていましたね。
人工光合成とは植物が行っている光合成を文字通り、人工的に行うことを指します。
2040~50年を目標にした研究開発が報告されることが多いですが、昨今のカーボンニュートラル(CN)実現の期待に伴い、検討が加速しているのかと思います。
実は私も数年だけ人工光合成の研究開発に携わったことがあり、その視点から少し批判的視点でブログを書こうと思います。
(携わったといっても、CO2変換電極の研究開発に注力していまいたが)
以下が私の懸念点と考えていることになります。
寿命(反応時間)
プレスリリースには350時間の連続反応を確認したとありました。
私は数時間の反応しか達成できていないため、ここは非常に素晴らしい成果だと思います。
しかしながら、1日の日照時間を5時間とすると、
350時間÷5時間/日=70日
となり、2か月とちょっとになります。
消費者は様々な製品が数年~10年ほど作動することを期待していると思うので、まだまだ道半ばという感じでしょうか。
ちなみに日照時間1日5時間は東京の平均からザックリ算出しまいた。
(1892.6時間/年÷365日/年=約5.2時間/日)
また、図3の「CO由来の固定量」の増え方が徐々に穏やかになってきているように見えます。
このような時は、1時間当たりの固定量を縦軸にとってもらうと劣化しているのかどうか、分かりやすいので見せて欲しいところです。
CO2濃度
CO2濃度100 %で実験しているデータとのことですが、大気中のCO2は400 ppm(0.04 %)ほどですので、DAC(Direct Air Capture)などのような、大気中のCO2濃度を高める技術が必要になります。
(DACはまた機会があれば)
恐らくですが、400 ppmのCO2ではほとんど反応しないのではないでしょうか。
せめて数%のCO2でも反応するようになれば、工場排ガスなどを使用することができるので価値はあるかと思います。
工場排ガスは排ガスで、様々な不純物を含んでいると思うので、技術的に難しいところはあると思います。
装置(電極)面積
プレスリリースを拝見すると、電極(CO2が反応する場所)1 m2当たりのCO2反応量を示していますが、電極の写真はどう見ても1 m2未満のように見えます。
装置は大きくするほど反応効率が下がることも考えられるため、装置を大きくしても反応効率が下がらないような改良を加えるか、小さい装置を何個も設置するような施策が必要になります。
後者の場合CO2の反応には有利ですが、水供給やCO2ガス供給の制御が難しくなりそうですね。
生成物
NTTはCO2からCOとギ酸を生成(作り出すこと)していました。
ギ酸は液体なのでボトル等で保管できますが、COは気体なので保管にはボンベ等が必要になるだけではなく、人体には有毒ですので、管理も難しいといったことが考えられます。
COは様々な化学品の原料ですので、需要はあると思いますが、この辺はマネジメント層がどのように考えているか気になるところですね。
個人的にはメタノールやエタノールといったアルコール類が得られればメリット大だと感じていますし、いつかCO2からアルコールを作りたいと考えています。
反応効率
本システムの太陽光変換効率が気になります。
人工光合成という名の通り、太陽光を利用することでCO2を変換するのですが、ここが非常に難しいポイントなのです。
私が過去に検討していた技術では、太陽光の利用率が数%しか示せず苦戦していました。
CO2変換も100 %で行えるわけではないので、仮に太陽光利用が10 %でCO2変換が50 %でしかできないとすると、全体では
10 %×0.5=5 %
となり、全体効率が5 %となってしまいます。
(実際に5 %も出せれば凄いですが)
個人的に思うこと
これまでの経験から思うこととしては、現状技術では太陽光を利用したCO2電解を開発していき、そこで培った技術を軸に人工光合成へシフトすべきかと考えています。
以上、プレスリリースの中身をじっくりと読まずに感じたことを好き勝手に書かせてもらいました。
破壊的なイノベーションがない限り、人工光合成はまだまだ先の技術だと思いますが、CNの鍵となるのは間違いないと思うので関係者各位には頑張って欲しいところです。
私も機会があれば、人工光合成やDACの研究開発に復帰したいと考えています。
今回の学び: 数百時間連続反応は素直に凄い。
2023.11.12